10月14日のバンビオLIVE vol.2、そして鉄道の日にちなんだ今回の短編小説《時代》。
第1話で登場した鉄郎の物語と、第2話で繰り広げられた往年の蒸気機関車《シロクニ》の歴史が
今回、リンクします。
どうぞお手元に、バンビオLIVEのチラシのご準備を。
BGMには、もちろんゴダイゴの銀河鉄道999が外せませんね。あ、百恵ちゃんも登場します。
そして、長岡京駅で出会ったあの、ロシア人風の美女の正体とは・・・?
Tb中川氏渾身の最終話、どうぞお楽しみください。
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「お父さ−ん。 チケットありがとう」。
鉄郎は 家族と一緒に 夕ご飯の食卓を 囲んでいた。
「あのさぁ。 昨日 駅で こんなチラシ配っていたんだけど
お父さんも一緒に コンサート行こうよ」。
鉄郎が父親に そのチラシを見せていた。
そして 高校生の姉が そのチラシを覗き込んでいる。
「まぁ− かわいいチラシ−っ」。
「えー どれどれー」。
「吹奏楽団せせらぎ バンビオ LIVE!ってかー」。
父親は 左手に そのチラシを持ち
右手には なみなみと 注ぎ込まれ美味しそうに泡立った ビールのグラスを 持っていた。
そのチラシの裏面には
{こんにちは 吹奏楽団せせらぎ です}っと書かれ 楽団の紹介なんかが書かれてある。
父親は 右手の美味しそうな そのグラスを 口へと運んで 一気に飲み干した。
すると 高校生の姉が父親から そのチラシを取り
「入場無料だって」。
「プログラムは 真夏のSoundS good!。風が吹いている。うみ。
また君に恋してる。プラス 金管アンサンブルステージ だって」。
そして 曲名の左に描かれている絵を見て 「何コレ?」。
再び父親が チラシを手にすると その絵を見て
「ほぉー いいねー」。と言って ニヤニヤと笑っていた。
鉄郎は
「お父さん!今度の日曜日 10月14日は!お仕事 休みだよね!
コンサート行こうよ!」と言うと。
「10月14日だったら 記念日じゃないか!」。
「ねーねー!記念日って 何なの?お父さーん」。高校生の姉が言った。
父親は ゴクゴクと のどを鳴らしながら ビールを胃袋に流し込んでいる。
「ひょっとして お母さんとの結婚記念日?」 と再び高校生の姉が言うと
「いや違うよ違うよ。
お父さんと お母さんの結婚記念日は 5月31日じゃないかー!」
父親が グラスに ビールを注ぎながら言った。
「じゃー 何なの? お父さーん。 記念日って。ねーっ」。
父親は グラスに注いだ美味しそうに泡立った そのビールを
再び一気に飲み干すと 二人に話した。
「むかーし昔 明治の《時代》にさー 東京の新橋っていう所から 横浜まで
鉄道が開通したのが 今から ちょうど140年前の
1872年 10月14日だったんだよ」。
父親は箸で 好物のメザシを摘みながら言った。そして そのメザシを口に運んだ。
すると鉄郎は
「あー そうなんだ! 10月14日は《鉄道記念日》なんだ! だから このチラシに
蒸気機関車が客車を引いて 夜空を飛んでいる 絵が描いてあるんだ!」。と言った。
そして 高校生の姉が そのチラシを見ながら
「じゃーさー このいっぱいのキラキラ星って 銀河なのかなー?
銀河の夜空を蒸気機関車が走ってるんだ。
それじゃー 宮沢賢治の《銀河鉄道の夜》じゃん」
と言うと 父親は「山口百恵の《乙女座宮》だよ」と言って
「♪♪さーああー 流星に乗ってー〜銀河大陸ぅー 横断鉄道ぉ 〜〜ぉぉ♪♪」
と酔っ払いオヤジは歌い始めた。
「お父さん! 今度の日曜日は バンビオライブ行こうよ!」。
「よーし じゃー今度の日曜日は みんなでコンサートに行こう!」 と父親が言った。
と その時 高校生の姉が「あーちょっと私 友達と約束してるんだぁ」
「あっ!お姉ちゃん。 もしかして。 デート!」
「コラ!!」姉が 鉄郎の頭を 軽くゲンコツした。
「もう お姉ちゃん!!何するんだよ!!もう!!痛いじゃないかー」
「オイオイ喧嘩を するんじゃない!お母さんが 見てるぞ!」。
「それで お前 彼氏がいるのか」と父親が言うと 高校生の姉はニヤニヤと笑っていた。
父親が 話を聞くと 彼氏は 凄すぎる程 鉄道と 音楽が 大好きらしい。
「じゃー 今度 日曜日に紹介しなさい 一緒にコンサートへ行こう!」
「えっ いいの?お父さん!」
鉄郎は 母の遺影を 見ていた。
「お母さんも 一緒に行きたかったな・・・・」。
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10月13日の土曜日に父親が ある提案を出した。
それは 明日の《鉄道の記念日》に 京都の梅小路蒸気機関車館っていう
日本で最大規模の 蒸気機関車の展示スペースに 子供達を連れて行き
そして あの 銀河の夜空を走る蒸気機関車が 描かれたチラシのコンサートへ 行こう
という企画だった。
家族団欒の夕ご飯が 終わると 父親は《シロクニ》の話を始めた。
「お父さーん シロクニってカッコイイ? 早く走るのー?」。
「そりゃあ 早いよ!超特急《つばめ》の先頭に 立って走っていたんだから」。
鉄郎は 生まれて初めて見る その《シロクニ》の話を 目を真ん丸くして聞いていた。
そして 早く 明日に ならないかなと 鉄郎は 床についた。
鉄郎は 父親の話を 思いかえしていた。
《シロクニ》は 超特急つばめ の先頭に立った御褒美に
スワローエンゼルのマークを 張り付けて貰った事。
《時代》の流れで 北海道へ行った事。
そして SLブームの《時代》がきて 再び活躍した事。
でも その最後の活躍の北海道にも《時代》が 押し寄せてきた事。
そして 《シロクニ》のラストランで 有終の美を飾った事。
鉄郎は 眠れなかった。
床につく前に お父さんが言った言葉に 興奮していた。
「鉄郎!その スワローエンゼルの 《シロクニ》はさー
明日 行く 梅小路蒸気機関車館に 展示してあるんだ」。
あの 北の大地で爆走していたスワロー エンゼルの《シロクニ》は
昭和47年10月14日 鉄道開通100年記念行事の 梅小路蒸気機関車館 開館のため
京都へ里帰りしていたんだ。
そして 父親は こうも言った。
「鉄郎!その《C−62型 蒸気機関車が あの 松本零士先生の 描いた
『銀河鉄道999』の モデルになった機関車なんだよ」。
鉄郎は 知らぬ間に 眠ってしまっていた。
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「鉄郎! この列車に乗るのよ!。
鉄郎! もう 過ぎ去った事は 忘れるのよ!。
鉄郎!この列車に乗るのよ!。
鉄郎!これからは 前を向いて走るのよ!。
鉄郎!この列車に乗るのよ!。
鉄郎!この列車に 乗って 未来へ 旅に出るのよ!。
鉄郎!私と一緒に この列車に乗るのよ!
鉄郎!この列車に乗って 新しい未来へ・・・・」。
鉄郎は 長袖のワンピースに 黒いコート。そしてロシア人が 被っているような
毛皮の高帽子に 腰まである綺麗な長い金髪と 切れ長の目に 長い睫毛。
そして瞳はブロンズの 特徴的な美人に手を引かれ 銀河行きの その列車に乗った。
鉄郎は 「お母さん!」と 一言の寝言を言った。
完。 トロンボーン 中川。