俺は野球が大好きだ!~その5~2011年11月6日
一度、酒を酌み交わしてみたい男がいる。
福岡ソフトバンク・ホークスの杉内俊哉投手(31)だ。
熱い男だ。
かつて、自身のふがいないピッチングに腹を立て、
利き手である左の拳でベンチだったか壁だったかをぶん殴り、
シーズンを棒に振ってしまったこともある。
しかし、そのピッチング・スタイルは、
「剛球でねじふせる」といったものではなく、
むしろ「飄々とした」と形容するほうが近い。
140Kmそこそこのストレートなのに、
打たれないのだ。
美しいフォームから投じられるストレートの軌道、
これまた実に美しい。
そういえば、第2回WBCでは中継ぎを担当していたが、
1点も取られなかった。
ソフトバンクvs埼玉西武のクライマックスシリーズ・ファイナルステージ第3戦。
ソフトバンク先発・杉内、西武先発・涌井。
見ごたえあるエース同士の投手戦に釘付けになってしまった。
序盤、ソフトバンクは全くヒットを打つことができない。
対する西武は杉内からチャンスをつくるが、
ソフトバンクの守備陣に阻まれ、得点することができない。
中盤から終盤は一転、ソフトバンクは涌井を攻める。
が、あと1本が出ない。
杉内は尻上がりに調子を上げ、
西武の打者を一人も出塁させない。
0対0のまま延長戦に突入。
えてして、こんな時はたった1本のホームランで試合が決まったりするものである。
そんな嫌な予感が頭をかすめた直後だった。
10回表、西武の4番・おかわりくんこと中村選手が、
レフトにでかい打球を放った。
「ああっ、やられた!」
そう思ったが、打球はレフト・フェンスを直撃、
なんとか二塁打でしのいだ。
直後、5番フェルナンデスへの初球、
「あっ、正直にいきすぎや、やばい!」
レフト線に持っていかれた。
中村、ホームイン。
うなだれる杉内、帽子を目深にかぶったまま降板。
号泣していた。
思えば昨年のロッテとのクライマックスシリーズ、
杉内は2敗を喫した。
きっと思ったに違いない。
「去年に続いて、今年もチームの力になることができない…」
ふがいない自分を責めていたのだろう。
だけど杉内よ、ここまでゲームを作ってきたのは君だ!
俺はかっこいいと思う。
10回裏、2アウト、ランナー2塁。
カウント3ボール・2ストライク。
追い込まれたソフトバンクの長谷川、
しかし次の打球、
なんと右中間を切り裂いた!
1対1、同点。
そう、野球は一人でやるものじゃない。
杉内よ、チームメートが敗戦投手から救ってくれたぞ!
西武の涌井も、ここでガックリきた。
が、おぬしも立派だったぞ。
延長12回裏、またも長谷川がヒット(この日4安打目)を放ち、
ソフトバンクはサヨナラ勝ちを飾った。
おめでとう、ソフトバンク、遂にポストシーズンの呪縛を脱しましたね。
8年ぶりの日本シリーズ、ご健闘をお祈りします。