小澤征爾さんと村上春樹さんの対談本を読む2014年8月27日
会社の近所の丸善ジュンク堂で何の気なしに本を渉猟していたら、
『小澤征爾さんと、音楽について話をする』という、
小澤征爾さんと村上春樹さんの対談を収めた文庫本がふっと目に留まりました。
(お二人の共著の形をとっている)
ぼちぼちスコア読みに集中していくべき時期が近づいているのですが、
これは興味深そうなので早速買って読むことにしました。
小澤征爾さんというと、
「日本が誇る世界的指揮者」という紹介のされ方が多いのではないでしょうか。
が、この本を読んでいると、
「日本が誇る」っていうのは必要なくて、
「世界的指揮者」なだけでいいように感じました。
というのは、若くして日本を飛び出した小澤征爾さんに、
「日本人」という印象があまりないのです。
国籍が日本というだけのことで、
もはや「世界人」という感じがするのです。
(あるいは「地球人」)
日本人であるということで、
ヨーロッパで受けたブーイングもあったらしいし、
やはり若い頃には「どうしようか?」と思ったこともあったそうですが、
なんだか小さなことに思えます。
音楽に内在するパワーであるとか、
内声部を浮き立たせるように指揮するだとか、
いわゆる「キャラを立たせようと」合図を送るだとか、
結構難しい話も多々出てきます。
が、不思議とスラスラ読み進めていけるのです。
小澤征爾さんのお話のリズム、
村上春樹さんの文体のリズム、
そういったのが巧く噛み合ってのことなのでしょうか。
とにかく面白くて面白くて、ガンガン読めてしまいました。
あと、アンサンブルにとって大変興味深い話。
小澤さんの音楽塾では、弦楽四重奏を基本とするそうなのです。
それがアンサンブルの基本であり、合奏の基礎となるからですって。
ピアノ・トリオを採り上げると、
各プレイヤーの「キャラの戦い」になることが多く、
アンサンブルの稽古にならないそうです。
「相手のことを思いやった演奏」という小澤さんの言葉があったと思いますが、
僕はとても嬉しくなりました。