『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』2013年12月30日

秋のある日、
近所の酒房「たなかや」で呑んでいた時のお話。
女将さんの息子さんのコースケ君と本の話題となりました。
コースケ君は凄い読書家なのです。

コースケ君に、
「『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を読んだこと、ありますか?」
と訊かれ、
「いや、読んだことないなぁ~。だけど…」
気になる言葉が一杯詰まった書名なのです。

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“ アンドロイド ”
2013年夏に大ヒットした日曜劇場『半沢直樹』のあとを受けてTBSが制作したのが、
キムタク主演の『安堂ロイド』。
100年後の世界からやってきたキムタク演じるアンドロイドが、
柴咲コウ演じるヒロイン安堂麻陽(あさひ)を守るために戦うストーリー。
賛否両論渦巻いた作品でしたが、私は面白く拝見いたしましたな。
庵野秀明さんが監修していた『安堂ロイド』、
SFとして大変よく練られていたと思います。

“ オートマタは電気羊の夢を見るか ”
オートマタとは、「機械人形」とか「自動人形」と訳される言葉。
「からくり人形」というほうが馴染みがあるでしょうか。
『宇宙戦艦ヤマト2199』第9話「時計仕掛けの虜囚」。
ガミラスのアンドロイド兵 “ ガミロイド ” に、
人としての意識があるか否か?を問う回で、
唐突に現れたテロップが “ オートマタは電気羊の夢を見るか ”。
これまで全く意味、というか出典が分からなかったのです。

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映画『ブレードランナー』の原作である、
フィリップ・K.ディック著『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』
コースケ君が貸してくれるというので、
忙しい日常の合間を縫って読み進めました。
そして年内最終の夜勤を終え、
明けの電車の中で読み終えました。

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終末戦争後の地球。
多くの人類は地球を脱出し、
使役アンドロイドとともに移民惑星で暮らしている。
が、自由を求めて主人を殺したアンドロイドが、
放射能まみれの地球に逃れてくる。
そんなアンドロイド狩りを生業とするリック・デッカードは、
彼ら(それら?)を殺す(処理する?)うちに、
人間とは何か?(アンドロイドとは何か?)に悩み始める。

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SF映画の金字塔といわれる『ブレードランナー』。
以前、観たことがあります。
当時の私はただただ圧倒されるばかりでした。
リック・デッカードを演じるハリソン・フォードはやっぱり凄いな、
これは強烈な印象です。

今回、小説を読んでみて、
また『ヤマト2199』がこの物語の影響を受けつつ作品構成していたことが分かり、
私の胸に去来したことがあります。
それはやはり、
人間とは何か?ということです。

小説の中、
リック・デッカードは、
たった一日で6人(6体?6機?)ものアンドロイドを殺し(処理し?)ます。
その中で、
彼自身がアンドロイドではないか(感情を持たないのではないか)という疑いに捕らわれたりします。

皆さんは、仕事に追われる日常の中、
感情をシャットアウトすることはないでしょうか?
正直、私はあります。
そんな時、自分が嫌になったことはないでしょうか?
自分は感情を持たない存在だと思ったことは?

先程も書きましたが、
私がこの小説を読み終えたのは、
夜勤明けの電車の中。
あまりに激烈な夜勤を終えた私は、
たった一日で6人も殺人(処理?)したリックの心情にシンクロしてしまい、
どうしようもなく疲れがたまってしまったのです。

一体俺は何ものだろう?