誰が『許されざる者』なのか2013年9月18日
クリント・イーストウッド監督・主演の『許されざる者』。
いつか観たいと思っていた映画だが、
まだ観ていない。
その日本版が公開された。
舞台は明治初期の北海道に移されている。
李相日監督・渡辺謙主演。
日本映画界最高のスタッフ・キャストで臨んだ大作といっていいだろう。
先に原作を観てからにしようかとも思ったが、
待ちきれずに日本版を観に行った。
今年、私が最も楽しみにしている映画の一つだからだ。
李相日監督の作品は、
これまで2本観ている。
『フラガール』(2006)と『悪人』(2010)だ。
『許されざる者』と『悪人』には、
似た問題提起があると思った。
『許されざる者』では、
まず間違いなく渡辺謙の役が「許されざる者」なのだが、
警察署長役の佐藤浩市も、
渡辺謙の理解者を演じる柄本明も、
誰も彼もが「許されざる者」ではないのか?
『悪人』では、
満島ひかりを殺して追われる妻夫木聡は「悪人」だが、
満島ひかりを山中に放置した岡田将生こそが真の「悪人」ではないのか?
『許されざる者』も『悪人』も、
観た後の爽快感なんてものからは程遠いが、
印象がズシリと胸に残る傑作であった。
一方、『フラガール』はスカッとする映画だった。
だが、この映画では、李相日監督のまた違った「ゆらぎ」感があったように思う。
主演はフラの先生役の松雪泰子なのだが、
フラガールのうちの一人・蒼井優が主役を完全に食っていた(と私は思う)。
「誰が主役なの?」感である。
『フラガール』のラストシーンは、
蒼井優の圧巻のソロ・ダンス。
その様子を松雪泰子先生は舞台袖から見つめ、
大きな拍車を送っていた…